(JSPS) 生物科学学会連合からの「雇止め問題に関するアンケート」の集計報告
分類学会連合担当委員の黒沢さんより、分類学会連合が加盟している生物科学学会連合(生科連)から「雇止め問題に関するアンケート」の集計報告、および今後の取り組みついての連絡のお知らせをいただきました。
日本分類学会連合加盟団体の皆様
日頃より大変お世話になっております。9月11日付でご依頼させていただいた日本分類学会連合が加盟する生物科学学会連合(生科連)よりの「雇止め問題に関するアンケート」につきまして、生科連よりアンケートの集計報告と、今後の取り組みについてご報告をいただきましたので以下に共有させていただきます。加盟団体の皆様におかれましては、本件にご協力いただき大変ありがとうございました。
参考メール)[UJSSB:00234] 「雇い止め問題」についてのアンケート周知のお願い
なお以下にありますように、アンケート結果を受けて、日本脳科学関連学会連合・生物科学学会連合等から文科省に向けた提言が行われる予定であり、日本分類学会連合としてもこの生科連の動きに賛同することを役員会にて承認させていただきましたことをご報告いたします。
日本分類学会連合
代表 藤田敏彦
(代理送信:庶務 井手竜也)
以下は生科連よりのご連絡の転送ですーーー
背景:
2013年4月施行の改正労働契約法によって契約期間が通算5年(大学教員・研究者の場合は特例で10年)を越えると無期契約に転換できると定められました。施行から10年目となる2023年4月に文科省が主に大学・研究機関に対して調査を行い、「現段階においては本制度が概ね適切に運用され、研究者・教員等の雇用の安定性の確保に一定の役割を果たしていると評価することができ、直ちに本制度を見直す必要はない」との方向での議論が進められています。そこで研究者サイドからの生の声を聞くことによって実態を把握することが企画されました。
結果:日本脳科学関連学会連合・生物科学学会連合等の協力をいただき、 2024月9月11日(水)~9月23日(月)にGoogle formで無記名/匿名でのアンケートを実施し、大学・研究機関の教員・研究員・ポスドク・学生など2,465名からご回答いただきました。この結果、被雇用者側の研究関係者の実態や悲痛な声のみならず、雇用側である研究室主催者などによる研究人材育成の困難さや研究力低下への影響についての懸念が多数示されました。多くの大学・研究機関においてこの問題が解決しているわけではないことは明らかです。 この調査結果の詳細についてはHPをご参照ください。
対策:この結果を踏まえて、藤田医科大学宮川教授(日本神経科学学会将来構想委員長)、京都大学高橋良輔教授(脳科連代表)、慶應義塾大学柚崎教授(日本学術会議・神経科学分科会委員長)は2024年9月25日に盛山正仁文部科学大臣を訪問し、9月27日には国民民主党古川元久議員、文部科学省 研究開発局 清浦 隆 審議官、文部科学省 科学技術・学術政策局 人材政策課 人材政策推進室 高見 暁子
室長を訪問し、アンケート結果の説明とともに研究現場での声を直接お伝えしました。毎日新聞等にも大きくこの問題を取り上げていただいています。次のステップとして以下の「提言」を文科省に提出することを考えています。
今後の対策への提言(案)
2013年4月施行の改正労働契約法によって、研究関係者(研究者、研究支援者(URA等)、技術員)が一定期間(5年ないし10年)雇用された後の無期転換申し込み権の発生を防止するために、雇い止めやクーリングといった問題が大学・研究機関等の多くの研究現場で起きているというアンケート結果1を踏まえて、以下の提言を文科省に対して行います2。これらの施策は、近年の我が国の研究力の低下や研究関係者人口の減少に対応するために喫緊の課題と考えます。
- 研究関係者のキャリアパスについて、適材適所の人材配置を可能とする流動性と安定性を両立するサステイナブルな仕組みを実現するための施策*3を可及的速やかに実施していただきたい。
- 上記の仕組みの構築に当たっては、研究分野・研究機関・性別・年代・地域を含む幅広い研究者コミュニティとの対話を十分に行い、それぞれの特性*4に沿った施策としていただきたい。
- 上記の仕組みを構築する一方で、無期転換雇用を避けることを目的とした雇い止めやクーリングが行われることを防止するための緊急措置を実施していただきたい。そのために以下の要件を満たす場合には、無期転換申し込み権を有したまま、一定期間有期雇用を継続することを可能としていただきたい。
・ 研究室主催者が当該の研究関係者について継続した雇用を希望しており、
・ 研究室主催者が当面必要となる人件費の支出を可能とする資金を有しており、
・ 被雇用者が有期雇用での継続を許容する場合、
以上。
注)
*1: アンケート内容および結果はHPをご参照ください。
*2: アンケートの回答として、2013年4月施行の改正労働契約法を元に戻すべき、という趣旨のご意見を多数いただきましたが、この法改正により「無期転換権を得た」、「良い方向に影響を受けた」という回答も少なからずあり、法の趣旨に則った運用を行っている大学・研究機関もあり、法律を単に元に戻すことは現実的ではないと考えられます。
*3: 例えば、当該機関での無期転換を可能とするための機関内配置転換の仕組みの整備や、キャリアサポートの拡充・実施(他機関・企業へ転出・転職支援やそのためのリスキリングなども含む)、大学・企業コンソーシアムなどによる無期雇用の仕組みの構築、それらを可能とするための間接経費の純増など。
*4: 例えば生命科学系では、一つの問題を解くために従来よりも多角的な技術を統合的に用いることの必要性が近年特に高まっており、研究論文をまとめるために時間がかかり、学位取得に要する年数やポスドクとしての雇用年数が世界的にも増加しています。また特殊技術を有する技術者を継続的に雇用する必要性も高まっています。
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日本分類学会連合(庶務)
井手 竜也
日本植物分類学会
庶務幹事 西野貴子