絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 (種の保存法)に関する意見書

2013年3月22日

環境大臣 石原伸晃 殿

日本植物分類学会 会長 角野 康郎

貴省の生物多様性保全への取り組みに対し、敬意を表します。

さて、私たち日本植物分類学会は、環境省のレッドデータブック(植物)作成のための現地調査を請け負うなど、絶滅危惧種の保全に関して学会を挙げて協力してきました。種の保存法の指定種の調査にも、当学会員が関与しています。今般、同法の改正が進められようとしていますが、より実効性のある法整備と施策の実現のために、ここに意見を表明させていただくこととしました。今回の法改正に活かされるように検討をお願いするものです。

提言(1) 科学者からなる専門委員会の常設を法改正に盛り込む

現行法では、国内希少種の選定過程の透明性と実効性が十分に担保されていません。種の絶滅リスクや指定による保全効果を科学的に検討する常設の科学委員会 (仮称)を設置し、委員会の具申を受けて国内希少種を指定する仕組みを設けることを提案します。それによって種の保存法は絶滅危惧種を保全するための中核的な法制度になるものと考えます。

提言(2) 生育・生息地等保護区の制度強化を法改正に盛り込む

生育・生息地の破壊が種の絶減の最大の原因になっていますが、現行法における生息地等保護区は限定的と言わざるを得ません。種指定とともに場の保全を保証する制度が不可欠であると私たちは考えています。全ての生物種は他の生物とのさまざまな相互関係の中で生きているという視点も生物多様性の保全には不可欠です。指定種の効果的な保全を可能にするためには、保護区の指定を推進していく仕組みが必要です。

提言(3) 絶減危惧種の調査研究・モニタリング体制を強化する

絶滅危惧種の保全においては、現状を長期的にモニタリングし、変化に迅速に対応することが求められます。植物に関しては、全国各地の在野の研究者の献身的な協力によって現地調査が支えられているという実態があります。このような活動を支援する自然史博物館等の施設も十分に整備されていない地域が数多くあります。今後、環境省としても絶滅危惧種の調査研究とモニタリング体制を強化するための施策を検討いただくように要望するものです。種の保存法における新たな種指定あるいは解除を促進し、保全事業の効率を高める上でも、このような体制の強化は不可欠と考えます。

以上、ご高配いただければ幸いです。